患者さんが自分のお口の中の状況を正確に把握し、ご自身で判断して、治療に参加していただくために、私たち、みやび矯正歯科医院では、歯科用CTを使用してより客観的で分かりやすい説明を心がけています。
どんな専門医でも顎の骨の中の状況は外側からはわかりません。歯科用CTで撮影することで、これまでのレントゲン検査で診断の難しかった部分も正確な把握ができます。
歯科用CTの撮影事例
犬歯の埋伏と異所萌出による永久歯の歯根吸収
確率は少ないですが、お口の中で交通事故のような出来事が起ることがあります。
時期的には乳歯と永久歯の交換の時期に起こりやすいです。
永久歯と永久歯がぶつかって歯根が吸収(溶ける)してしまう事があります。
11歳の女性です。
噛み合わせが良くない事を気にされて来院されました。
歯を前から数えて行くと1番、2番、3番・・・3番目の犬歯が生えていません。
お口の中を眺めても、触ってみても、なぜ犬歯が生えていないのか、何処にあるのか分かりません。そもそも、犬歯が有るのか無いのかさえも分かりません。
このままでは、まったく見当が付きませんので状況を把握するために歯科用CTを撮影してみました。
撮影した歯科用CTの画像を確認して「あっ!」っと文字通り息を飲みました。
上顎正中部に犬歯の異所萌出を認めました。それだけならまだ良かったのですが、犬歯の萌出力により永久歯の著しい歯根吸収が生じています。
歯科用CTの画像とお口の中の写真を重ね合わせてみました。
右上の中切歯と左上の側切歯の保存は不可能です。ご存じのとおり、永久歯というのは生え代わらない歯です。1度吸収(溶ける)してしまった歯は元には戻りません。
11歳にして永久歯2本の寿命が尽きてしまっています。(2本抜歯)
角度を変えて見てみましょう。
やはり、お口の中を眺めても、犬歯がどこにあるのか分かりません。目視では、犬歯が有るのか無いのかさえも分かりません。
同じ角度からの歯科用CT画像を確認してみますと・・・
右上中切歯と左上側切歯の歯根のあるべき場所に犬歯があります。永久歯の歯根をほとんど吸収してしまっています。犬歯の生えてくる方向が悪すぎて、交通事故のような状態になってしまっています。
歯科用CTの画像とお口の中の写真を重ね合わせてみました。
この角度から確認しても、右上の中切歯と左上の側切歯の保存は不可能です。
繰り返しますが、永久歯というのは生え代わらない歯です。1度吸収(溶ける)してしまった歯は元には戻りません。
11歳にして永久歯2本の寿命が尽きてしまっています。(2本抜歯)
この出来事は防げたのでしょうか?
犬歯が出てくるのは通常9歳頃です。その頃に「様子を見ましょう」と単に待っていたためにこのような事態が起こったと考えられます。
せめて1年前・・ 欲を言えば2年前くらいに歯科用CTなどで骨の中の状態を確認していれば、事態に気が付き、犬歯の方向転換を図ることも出来ました。少し悔やまれる事態です。
こういった事例を避けるために経過観察としての歯科用CTの撮影をお勧めする事があります。
特に乳歯と永久歯の交換時期のお口の中の状況把握に歯科用CTは効果的です。
6歳のお子さんのお口の中の写真です。
乳歯が並んでいます。キレイな歯並びに見えます。表面上からは何の問題も無さそうですが....骨の中ではどんな事が起こっているのでしょうか?
歯科用CTで撮影してみると、永久歯は乳歯のように綺麗には並んでいないことが分かります。
上あごの永久歯を見てみますと、2番目の歯が出る場所が十分ではありません。場所がないので、すでに後ろから生えてくることが確定しています。
下あごの永久歯を見てみますと、上ほど窮屈ではありませんが2番目の歯と3番目の歯(犬歯)が場所を取り合っています。
またこんな角度から確認できるのも歯科用CTならではです。
後ろ側(お口の内側)から見たところです。
上あごの2番目の歯が内側にある事や下あごの前歯や3番目の歯(犬歯)が窮屈なことが分かります。
左横から見てみますと、同じく何の問題もなさそうです。
歯科用CTの画像を確認してみますと、上のあごは窮屈です2番3番4番の歯が場所を取り合っています。
この場合将来的には、2番目の歯が裏に生えるか、3番目の歯(犬歯)が八重歯になるかどちらかです。
右横から見た写真です。
同じく歯科用CTの画像を確認してみますと、上あごも下あごも左側よりも窮屈です。
右下の3番目の歯(犬歯)が八重歯になるかもしれません。
幸いなことに 過剰歯(余計な歯)はありません。欠損歯(足りない歯)もありません。ひと安心です。
最近では、欠損歯や歯が生えてくる方向に問題を抱えたお子さんも
見受けられるようになってきました。
表面からはわかりませんが歯科用CTで確認することで
永久歯の歯並びがどのような状況に向かいつつあるのか?
このまましばらく様子を見ていて良いのか?
それとも治療を開始した方が良い状況なのか?
お口の中の状況を正確に把握して、ご自身でも判断して頂くことができます。